死武専を出てからずっとソウルの挙動がおかしい。ずっと言っても学校から私達のアパートまで十分程度なのだが、その道中の半分くらい、前を見たり横を見たり私が睨むと顔をそらしたり、今更ながらお上りさんみたいな真似をしている。何がしたいのかさっぱり分からなくて、おかげで今まで自分が喋っていた話の内容も忘れてしまった。あれ、ソウル相手にどんなこと喋ってたんだっけ?凄くどうでもいいことのような大切なことのような。さっぱり思い出せない時点で口が開かなくなってしまい、私とソウルの間には沈黙が漂う。かといって夕方のデスシティは人通りも多い方で、喋らなくても辺りは充分うるさかった。ソウルの頭に夕日が当たり、何かを考え込むような微妙な表情を演出している。けどこちらに向かって話しかけることはない。私は今まで話していた内容をどうにか思い出そうとしていた。忘れていたってことはどうでもいい内容に違いないけど、確か物凄く早口で喋っていた気がするから、帰り道の十分間で話したい事柄だったに違いない。何だっけ、何だっけ、うーこうゆうのってイライラする。イライラするので、アパートの入り口前で足を踏み締めて振り
返りソウルの移動を止めてやる。鎌はギクッとした表情を作ってビタッとその場に制止する。
「あんた鬱陶しいのよ!さっきからキョロキョロキョロキョロ何見てんのよ!不審な真似を、」
するなっ!と完璧に八つ当たりの平手打ち。ソウルの頭がぱこーんと左側に傾いた。避けるでもなく反撃するでもなく、ソウルは殴られた頭に手をやると口の中でもごもご。何だその動作。ちょっとだけ残っていた「理由もなく殴ってごめん」的な気持ちがどっかに消え失せ、私は手を握り締める。
「言いたいことがあるならはっきり言えよ!」
アパートの前には誰も来ない。来たら私達のこれはどう映るだろう、痴話喧嘩ってやつか?職人と武器だと分かっていたなら、パートナー間の揉めごとはよくある話だとしてやり過ごしてくれるだろうか。私はソウルが変なことを言ったら迷わずもう一発くれてやるつもりで(何も言わずに黙っていても殴るつもりなので結局ソウルは痛い思いをするだろうけど)肩をいからせた。これ以上待たせたら何をするのか分からない。今の私は随分おっかない職人のはずだった。でも職人って皆そういうものだろう?優しい職人なんてすぐ死んでるはずだ。私だって例外じゃない。死にたくないから怖くなる。少なくとも、武器に気を抜くなんてありえない。