マカは変なところで、というかこの際ぶっちゃけるが常にあらゆるところがガキくさくて本当に参る。さっきだって何だ、俺はそんなにキレられるようなことを言ったのか?そこに気付けない辺り俺だって相当こどもなんだろうけどそれにしたってマカのあれはないだろう?アパートの前で散々暴れたあげく帰ったら一時間部屋にこもりきり。やっと出てきたと思ったらけろっとした顔で居間で本を読んでいる。俺は食事当番だから台所でカタカタ包丁を動かしてるとそういうわけだ。もう意味分かんねー。まだ頬がヒリヒリするし。
それにしても、さっきまで俺は何で手を繋ごうなんて思ったんだろう。考えの変化が唐突すぎてまるで自分の中にもうひとりいるような感じだ。ありえない。だから俺があれこれ考えたあげくの行動なんだろうが、そう思うとやはり意味が分からない。死武専から帰る途中の長い石畳の通路で、マカの頭に夕日が当たってただでさえ明るい髪の毛がオレンジ色に染まって、べらべら話す内容が右から左に抜けていって、それで俺は右から左に首を動かしたのだろう。で、そこに手を繋いでいる誰かを見付けたのかもしれない。それが羨ましかったのだろうか、まあ完全なる想像だけど。でもアパートに着くまでずっと手を繋ぐ方法を考えていたのは確かである。
マカと手を繋いだことなんて何回もある。当たり前だ。握ってもらわなきゃ俺を振るってもらえない。そうなったらマカは悪人に殺されて死ぬ、もしくは大怪我をする。だから俺は知恵を働かせてでもマカに触ってもらわなきゃいけない。しかしその知恵の振るいどころは今じゃない、別の場所、別の時間だ。そう、今じゃ、ない。ストン、サクン。包丁のリズムが妙に一定で気持ちがいい。
「あああああーーー!!」
後ろから大声。俺は大袈裟にギョッとして肩が持ち上がり危うく指を切断するところだった。洒落じゃない、この包丁は最近研いだばかりで切れ味が抜群なのだ。遅れてやってきた心臓のバクバクを押さえて振り向くと、マカがソファーから立ち上がって晴れ晴れとした笑顔を見せていた。その首がぐるんと回り俺の方に向く。首の回り方が化け物じみていて俺はゾクリとする。
「思い出した!」
「何をだよ」
「昼間話してた内容!」
何がそんなに嬉しいのかさっぱり分からないはしゃぎっぷりで、マカは飛び跳ねそうになりながら俺を手招いた。飯を作らせないつもりか。腹減ったから何か食いたいのに。