今日もマカに昼ご飯に置いていかれたまま教室で授業の続きのごとく突っ伏して寝てるソウル=イーター。私はそれを後ろの席からじっと眺めてるただの気持ち悪い女子、まだ、女子。ソウルのつむじは変に後ろから始まっていて寝ているとその様子がとても分かりやすく表れていて私はその真ん中に指を当ててグリグリ動かして起こしてやりたくなる。でもしない。席が遠いから。隣に座ることもしない。そこは私の席じゃないから。
持っていた消しゴムを千切ってソウルの頭に投げ付けた。好んで着ている黄色いジャンバーに白い消しゴムがはらはら舞っていて、でっかい雪が落ちているみたいだった。頭にもいくつか乗ったかもしれないけどこいつの頭って白髪だから分からない。どちらにせよ、まだ起きない。
何やってんだろ、私も昼の時間を損してまで、どうしてここにいるんだろ。パートナーの武器はため息をついてどっかに行ってしまった。私が憂鬱な気分になっているとでも思っているらしい。正解正解全部正解。ひとりにしてくれてありがとう。憂鬱なのも当たってる。ああ腹が立つ。私、どうして、こんな馬鹿が、好きなんだよ。
ぺっ、と投げ付けた十二個目の消しゴムで、ソウルはようやく目を覚ました。ぼりぼり頭をかいて、きょろきょろ周りを見回して、ちら、とこちらを見る。
「ソウル」
私は言ってやる。肘をついて顎を乗せて、それはやる気のない顔を作って、さらさら風みたいに呟く。
「私と付き合おうよ」
馬鹿なソウルは目をパチパチと動かして、もう一回頭をかいて、一瞬目をそらして、ちょっと眉を寄せた。聞く。
「何で?」
「好きだから」
「……起きて早々告られたし」
「寝起きがきくってどっかで読んだ」
「ふーん」
ソウルはこちらを見ない。私は頬杖をついたまま、返事を待つ。心臓は変に落ち着いたままだ。これだけ何も感じないと面白い。
「……悪いけど、はそういう対象じゃないっていうか」
「こなくそっ」
「った!何すんだよ!」
「よくもフってくれたな」
私は残りの消しゴムを全部ソウルに投げ付けた。思いっ切り。ソウルはぶつくさ文句を言いつつ、上着をはたいている。どうやら服の中に入ったらしく、背中に手を伸ばして顔をしかめていた。いい気味だ。
私は突っ伏して呻いた。何とも思っていないはずだけど、やっぱり何かを断られるというのは精神的に来るものだ。妙に腹が立つ、自業自得だが。
「あー、ソウルが駄目ならマカにしよっかなー」
「はあ?どういう意味だよ」
「まんまだよ。マカと付き合っちゃおっかなーって」
「えええ?なに、お前そういう趣味の方?」
「うっさいな。別にソウルがマカと付き合ってるわけじゃないんでしょ?ならいいじゃんか。ソウルよりよっぽどかっこいいしなー、今から言ってくるか」
「待て待て待て待て」
ソウルは妙に必死な声を出して私を呼び止めた。実際に手首を掴もうとするので私は思いっ切りそれを振り払う。触んないでよ、変に期待するでしょうが。
「何で待てなのさ」
「いや、待った、よく考えてみろよ、おかしいだろ」
「おかしくない、全然おかしくない」
「おま、自分のパートナーに悪いとは思わねえのかよ?」
「ああ、ガトリングの格好いい彼」
私は自分のパートナーを思い出す。両手でなければ持てない格好いい武器。機動性ゼロ、全弾撃ち終わったあとにはぐったりした職人が残るという素敵な武器。私は首を振る。
「あいつは駄目よ、そんなんじゃないから」
「だからといって何でマカなんだよ」
「しつっこいな、そんなに寂しかったらうちのガトリング君あげるからそいつと仲よくしてれば?それが嫌ならあんたがマカに告れよ!」
ぎりっと口を噛んで、私はソウルの腕を掴んだ。今度は向こうから振り払われる。私の手が机に当たるくらい思いっ切りだ。ジンジンする。ソウルは黙る。私も黙る。言葉がない。沈黙していても仕方がない。なにこの馬鹿げた状況。別れ際の修羅場かよ。残念ながら、私はまだ付き合ってもいないんだ。
ごくん、と息を飲み込んで、私は声を出す。顔を上げると、まだ何を言おうか迷っているソウルが見えた。悪いけど、こちとら場の空気を読まないことに関しては、マカ以上に定評があるんだな。
「……さっさとご飯食べてきたら?食堂閉まるよ」
「……ああ」
ソウルは気の抜けた表情でそう答えると、目をそらしつつ私の横を抜けていった。足でも引っかけてやろうかと思ったけどあまりに大人気ないのでやめた。
「……ぶっはー」
別に泣きやしないけど、色々終わった感じが、私に深いため息をつかせた。私はポケットから携帯を取り出して、乱暴にボタンを押した。
「……よー、私私、誰ってあんた名前表示されてんでしょうが。嫌なことあったから外に食べに行こう。駄目、絶対。あんた私の武器でしょうが。職人の言うこと聞きなさい。何も言わずに慰めてくれればいいのよ、分かった?」
2009:03:26