ソウルがどうやら世界で一番安全な場所だと思っているらしい寝室に、鍵を開けてこっそり忍び込んだ。鍵付きだとはいえ所詮アパート、外からコインでいじれば簡単に開くのだ。
ベッドの脇に立ち、かけ布団からはみ出している顔を見る。間抜け面。口を開けて寝ている。どうやら夢は見ていないらしく、顔面の筋肉は穏やかなものだった。私がすぐ側で寝顔を見下ろしていることなど、まるで気付いていない。
思わず笑ってしまう。ソウルって本当に馬鹿だ。情けない、格好悪い。クールになるとかうそぶいているが、最初の一文字にも及んでいない。私はいつかの課外授業を思い出す。あいつは部屋で叫んでたな、確か「うわあああ」だったか。何それ?今どき女の子ですら上げないような悲鳴を出して、ソウルはただ近寄ってくる私から逃げ出したのだ。ばっかみたい、阿呆くさい、その時の様子をビデオに収めて、死武専中にばらまいてやりたかった。こいつがいかに無理をしているのかすぐに明らかになる。
私は懐から、錠剤をひと粒取り出した。かなり小さい。なくさないように注意する。タイミングを見計らって、ソウルの開いた口に放り込んだ。馬鹿なソウルは何の疑問も抵抗もなく、その錠剤を飲み込む。喉が変形する。つまった様子はない。
私はふうと息を吐いて、来た時と同じようにこっそりと、自分の部屋に戻る。ソウルの部屋を施錠することも忘れない。白髪の間抜け面を忘れようと努力すると、案外簡単に眠くなった。
とりあえず、お楽しみは明日のはずだった。
「っ、ぐああああッ!?」
休日の朝八時。案の定というか、予想済みの悲鳴がソウルの部屋から聞こえる。帰ってきたばかりのブレアはリビングでお休み中。私は読んでいた本を閉じて、ソウルの部屋に向かう。
一応ノックするが、開ける気配はない。外から声を出す。
「ソウル?どしたの?クモでもいた?」
「やっ、その、ちが」
混乱し切った声。その声が、普段より一オクターブ以上、妙に高い。私は成功の予感に微笑む。中で慌てふためいているソウルを想像しながら、わざと楽しそうな声を出す。
「あれ、ソウル、声変じゃない?風邪ひいたの?」
「ぐっ、だから違うって」
「入れてよー、熱計るから。私にもうつされると困るしさあ、ソウルがいっつも持ってくるじゃん、風邪とかは」
「は、入んな!平気だから、とにかく入んないでくれ!」
悲壮感さえ漂うソウルの懇願。私は無視する。声を出して笑いたいくらいだ。つい何時間か前にも使った手口で、鍵を開ける。
「……!!!」
バンッ、と勢いよく扉が開いた。期待で輝いているだろう私の目に、部屋の中央で立ち尽くしたソウルが映る。
「……へええええ?」
私は感心した。よくできている、なんてものじゃない。完璧だ、言うことなし、百点を百倍してあげたいくらい、素晴らしい結果だ。
ひと言で言うならば、ソウルは女の子になっていた。身長は私より少し低いだろうか。白髪と赤い目は変わらないが、体格は華奢で、着ているTシャツがずれて肩が見えている。ズボンはゴムで留めているらしく落ちてこない。一体何を隠したいのか、腕を胸の前で交差していた。意味が分からない。
「んなっ、おまっ、どうやって入って」
「なにソウルその格好。まるで女の子みたいだけど」
ソウルの台詞を遮って、私は指摘する。奴が返答につまる間に、ゆっくりドアを閉め鍵をかけた。
「し、知るか!朝起きたらこうだったんだよ!意味分かんねえよ!お前絶対何かやったろ!」
「さあ?よくは知らないけど」
私は首をひねってみせる。ぐるると吠えるソウル。大股で近付き、よく分からない動きをしている腕を掴んで払いのけ、無理矢理シャツをまくった。やめろ、というソウルの抵抗が、本当に女の子のようで面白い。声が高いから何でも笑えてしまう。
シャツの下には、当たり前だけど下着なんて着けていない肌があって、私よりも小さいような胸が上下に振動していた。腰が細くて今にも折れそうだ。
ふむふむと観察していると、ソウルがばっと手を振り払って私から離れた。本人が意識してやっているわけではないだろうに、動作全てが女の子のようだ。
「やめ、やめろよ!変態かよお前は!」
「違うに決まってんでしょ。あんたが風邪ひいてるかそうじゃないか、確かめてたの」
ソウルは馬鹿だからちょっとそれらしいことを言うとすぐに頭をパンクさせてしまう。ただでさえ混乱しているのだから効果は倍々だろう。ローリスク、ハイリターン。現実にはありえない効果の応酬だ。
一歩か二歩あとずさっただけで私から逃げた気になっているソウル。阿呆じゃないのと鼻を鳴らし、細い足を思いっ切り払う。武器は体力がないのか、頭から崩れ落ちそうにバランスを崩した。体ごと抱き抱えて、ベッドに放り投げる。思った以上に軽い体。「うわあっ」だって。またかよ。進歩がないな。
私は目を白黒させているソウルの上にまたがり、両手を押さえ付けて拘束した。寝起きで乱れた服や髪やシーツが、ソウルが暴れるせいでまたぐちゃぐちゃになる。どれだけもがこうが、私の手は外れない。
「職人と武器の体力テスト、平均何点違ったか忘れたの?つうか私とあんたの体力の差を思い出して欲しいものね」
「なっ、マカ!お前、何やってんだよ!離せよ!痛いって!」
「やだ。離さない」
私は即答する。表情を歪めるソウルに顔を近付けて、にやーっという笑顔を作ってみた。
「ねえ、私前にさあ、あんたが女だったらよかったって話したじゃない?」
「は、はあ?女だったらって……」
「今ってまさにその状況だよね。あー、これで私が男だったらよかったのになあ。もっと面白かったのに」
「って、てめえこのガリ勉!やっぱお前が原因じゃねえかよ!戻せ、今すぐ戻せ!そろかどけ!」
ソウルは目を潤ませながら(と、私にはそのように見える)、首を振って抵抗した。シャツがまくれて、腰や首元がはだけている。私は何故かゾクゾクしたものを腰に感じると、ゆっくり口を動かして声を出した。
「や、だ。前言ったじゃない。『あんたが女だったら可愛がってやるのに』」
「言ってねえ!絶対言ってねえよ!お前何考えてんだよ!?俺は男で、今は朝だぞ!朝っぱらから、」
「朝とか関係ないし。それに、ソウルは今は女の子じゃない?」
「関係あるわっ!昨日も言ったろ、俺は昼から用事が」
うるさいソウルの口を塞ぐ。勿論口で。奴はほげっなどと変な声を出す。全く可愛げがない。つまらない人間だこと。けど、まあ、見た目は女の子なのだ。白髪と赤い垂れ目は相変わらずだが、そこだけは否定できないところなので、私は背徳的な感情で一杯になってしまう。やだ、女の子同士とか、そんな趣味なかったんだけどなあ。まあいっか。
口内を舌で散々にねぶって口を離すと、ソウルは顔を赤くして荒い息をついていた。やっぱり、この変態が。私が両腕と腰を押さえて、動けなくしているのがまたいいらしい。錯覚かと思っていた涙が、目の端に浮かんでいる。
「ふん、あんたは普段通りの私が相手だもんね。面白くないでしょ」
「ま、か、頼むから、離してって」
「嫌だ嫌だ」
私は再三の否定を口にすると、手の拘束を片手にして、もう片方でソウルのシャツをめくる。片手だろうが、今や女の子のソウルは抵抗できないらしく、されるがままだった。いや、むしろ、望んで待ってるのかな。変態だから。
Tシャツを首元までまくってしまうと、さっき見た薄い体が露出した。私はシャツをソウルの頭から脱がせ、手の拘束をそれで行えるようにする。そうしてから、両手で小さい胸に触った。膨らんでいるかいないか、微妙なところである。まあ、昨日の夜までは確実に男だったのだから、当たり前といえばそうかもしれない。
「ソウルおっぱいちっさいね。私のこと馬鹿にできないじゃん」
「知る、か、触んな、馬鹿」
「胸って揉むと大きくなるって本当?試してみよっか」
といっても揉むほどないのが現状だが、それは言葉の綾というものである。どこかで聞いた話だと、小さい方が感度がいいとか何とか。とにかく、ソウルの胸をいじるというのは初体験なので、色々試したかった。
両手を回すように動かすと、ソウルはあの妙に高い、でもどこか可愛い声を出した。
「ひゃっ、ひあっ、うっく」
何だか興奮してくる。何だこいつ、男の癖にこんな声出しちゃって、本当に変態なの?女の子に胸いじられて気持ちいいの?心ゆくまで罵倒したい気持ちに襲われる。
私は大きく深呼吸して感情を押さえ付けると、れろ、と乳首に舌を這わせた。私はあまりされないが、だからといって私がやらない理由にはならないだろう。
「ひぁっ、やっ、おま、マカ!やめっ、やめろってば!」
ソウルはのけぞるように体を跳ねさせた。その様子は楽しくて、やりがいを感じさせる。私が舌の先でいじると、ソウルは恐らく誰にも聞かせたことがないだろう、悩ましげな声を出す。
「うぁ、あぅ、ひぁあっ、うえぇ」
やばい、これはまずい。何だこの女子ソウルは。これこのまま外に放り出されたら、その手の趣味を持つ男どもに寄ってたかって犯されるんじゃないだろうか。ここが家で、相手が私で、本当によかったねソウル。
私は顔を上げて、もう一回口付けをする。すっかり息が上がっているソウルは、特に抵抗もなく受け入れた。舌が絡む。べちょべちょいやらしい音がする。私は手を伸ばして、ソウルを拘束していたTシャツを脱がせた。両手が自由になったソウルは、一瞬呆けた顔で動きを止めた。その手を取って、私は下へ誘導する。ズボンや下着はゴムで留められているが、腰が細いからあまり意味がない。二人分の手を入れられる隙間ができる。
ソウルの手に重ねて、足の付け根を触った。明らかに自分の生来の体ではないところを触っているのが嫌なのだろうか、ソウルは口を覆って目を閉じる。いや、声を抑えているのかもしれない。私は膣口の割れ目に指を当てさせると、中へ指を押し込んだ。
「ッ……!ま、か」
中はどろどろと濡れている。さすが変態のソウル、たったこれだけでもう十分気持ちいいらしい。まあ、私も否定しない。スカートでよかったと思うが、私だって下着まで染みるほどに濡れている。こいつ、この白髪頭が、顔を赤くして変な声を出すのがいけないのだ。腰がゾクゾクして、正直四つん這いでいることすら辛かった。
ふう、と息をついて、ソウルの腰の上からどく。手は掴んだままだ。
「どうなの?気持ちいいのに男性器がない状態って、生理的にどういう気持ち?」
「お、ま……萎えること言うなよ……」
「変態に構ってるんだからそれだけで感謝して欲しいものよ。ちなみに女性器にも勃起するものはあるよ。陰核っていうんだっけ、よく覚えてないけど」
ソウルが嫌そうな顔をする。耳年寄りの癖に、具体的な単語を嫌悪するなんてこどもっぽい。こんなの保健の教科書にだって載っている、覚えるべき人体の構造だ。ソウルにだってたまにはいい点数を取ってもらいたいよ。
私はソウルのズボンと下着を同時に脱がす。上から聞こえる細い悲鳴。勘弁してくれ、本当に女の子にでもなったつもりなの?だからあんたは頼りなくて格好悪くて情けないのよ。
腰から足にかけてのラインは酷く細くて貧弱で、私よりずっと年下の体のように思えた。年端もいかない子にいたずらをしているようで、一瞬頭が冷静になるが、振り払ってすぐに打ち消す。気にすることはない。相手はソウルだ。
ぐちゃぐちゃに濡れている割れ目に顔を近付ける。何故かあまり躊躇いはない。ちょっと息を吸い込んで、口を付けた。すぐに、ソウルの手が私の頭にやってくる。
「ちょっ、マカ、おまえっ、なにやって」
「あによ、もんくえもあんの?」
口が回らない。息がかかって、ソウルの体はびくびくと震えた。私をどかそうとした手のようだが、全く役目を果たさず、逆に内側に招き入れるような形になってしまっている。
私は細い足を広げさせて、奥の方へ舌を差し入れた。特に何の感傷もない。少し疲れるだけだ。
「ひぁっ、まか、ばかやろっ、やめっ、やめろってばっ」
そう言われてやめる馬鹿がどこにいるのだろう。全てが自分と同じ人種だと思ったら大間違いである。使えるのが舌だけなので、私の顔はソウルのでどろどろになってしまっているが、構わない。音を出して吸い上げて刺激してやる。
「いひゃあっ、わっ、んぁっ、まっ、やめっ」
ほんと、妙に可愛い声だ。録音してあとで聞かせてやろうかと思うが、あいにくと機材がない。本人が覚えているだろうから、それでいいか。
不意に声が止まる。間を置かずに、どろどろの液体が奥から溢れてくる。私は鼻の辺りまでそれで汚されて、ちょっと咳き込む。顔を上げる。ソウルは両手で顔を覆っていた。まさか、泣いてる?
体を起こして手を外させると、さすがに泣いてはいなかった。顔が赤くて目が潤んでいるが、これはただの興奮と羞恥の結果だろう。私は顔を押し付けるようにソウルにキスをする。自分の味だ、確かめてみろこの変態。
「うふぁっ、げほっ、おええ……」
「早いわね、さすが早漏さん、この年で」
「お前が!変なことするから、いけないんだろうがっ!」
怒鳴っても全く怖くない。私はソウルの上からどくと、思い出したような声を出す。
「あれ?そういえば今日、昼から約束してたんじゃないの?いいの?」
「……!!!!!」
ソウルの顔が引きつる。同時に自分の体を腕で隠した。私は顔を拭いながら、にっこり微笑んでやる。
「まあ、そんなことは、どうでもいいじゃない?シャワーでも浴びてきたら?見苦しいから」
「ぐっ、あっ、このっ、ガリ勉女!変態!サド!」
「ひとりでお風呂入れる?マカお姉さんが手伝ってあげよっか」
「いらねえよ!」
さっきまで可愛らしく横たわっていたソウルは、さっさと服を着ると部屋を出ていってしまった。リビングでブレアが寝てるの知ってんのかな。
さて、蛇足だが。
どうも動く気になれなくて、ティッシュで顔を拭いたあとも、ソウルのベッドで足を揺らしていたら、凄まじい早技で部屋の主が帰ってきた。
しかも、男に戻った姿で。
「………………」
「わっ、何だよ、何でまだいるんだよ」
私は声が出ない。服は変えているが、体格と声がいつも通りになっている。そんな、馬鹿な。何という効き目の短さ。私を拍子抜けで殺す気なのか。
「なあ、ほんと何してんの?」
「……うっさいな、つまんないからもう帰る。さっさと出かけてこい」
可愛らしさのなくなったソウルにもう用はない。私はだるい体を持ち上げて、さっさと部屋に戻ることにした。
とんっ。
と思ったら、体が持ち上がらない。いや、自分では起こしたつもりだったのだけど、前から押されたのだ。目の前には妙に楽しそうな変態君。私の肩を押さえて座らせると、かくっと首を傾けた。
「じゃあマカ、今度はマカの番な」
「はあ?」
「いや、だってマカさんは気持ちよくなってないっしょ?」
「はああああ?」
そう言って私を押す力はやけに強い。私が弱っているのか、今まで女の子だったから力が余っているのか分からないが、抵抗できないまま、今度はこちらがベッドに倒される。
濡れたままの髪が顔にかかって、気持ち悪いのとくすぐったいのとで吐きそうになる。ソウルはそんなことは全く構わずに、ニヤニヤ笑っている。
「だってさっきの完全に俺いじめだったしね、これはお礼です」
「いらねえよ!さっさと家から出てけ!」
「まだ昼までには時間がありますから、ちゃんと終わらせますって」
「そんな約束はいらない!」
怒鳴ってもソウルの体はどかない。ちくしょう、変態め、今度は百粒くらい一気飲みさせてやるから覚悟しやがれ!
2009:01:31