「私ソウルが他の人とエッチしてるのが見たい」
「ぶほぅうぇっ!!」
穏やかな午後の日である。日差しはさんさんと部屋に差し込み、外気温との差もあまりないように思われる。つまりは暖かくて眠い日なのだけど。
「ちょ、おま、正気か?変なもん食ったんじゃねえのか?」
マカは首を振る。あくまで難しげ、真面目な顔付き。俺の眠気はさっきの発言で一発で吹き飛んだ。吹き飛んだとかそういうレベルじゃなくて、全速力でフルマラソンを完走したしたような気分である。心臓バックバク、汗ダッラダラだ。
「おい待て、落ち着け、まずは深呼吸だ」
「落ち着いてるよ」
「落ち着いてねえよ、目がすわってるよ」
「いつもと同じでしょ」
「理由、まずは理由を説明しろ、そうしてくれなきゃ困る、いや困るっつうか、説明しても、その、何だ、実演する気は全くないけど」
マカはぷう、と顔を膨らませて指を組んだ。休日だというのに髪の毛はいつも通りしっかり結ばれ、かっちりしたシャツとカーディガンを着ている。授業のつもりなんだろうか。色々間違えている、間違えまくっている。
「だって、ソウルの顔が変わらなくてつまらないんだもん」
「つま、つまんないってさあ……」
「私としては、わめいて欲しいし叫んで欲しいし泣いて許しを請うて欲しいの」
泣くのもわめくのも暴れるのもマカがこの前実際にやったことである。あと俺が黙っているのはマカがするなと言うから従っているのであって、俺自身が望んで静かなわけじゃない。
マカは不満そうに続ける。
「考えたの。私だから慣れてるんじゃないのかって。他の人とやればいいんじゃないのかって」
「で、できればそれを見物したいって?」
「うん」
「お前さあ……俺のこと散々変態呼ばわりするけど、自分の方がよっぽど変わってるって」
「純粋な興味だもん。あともう手はずも整えたし」
「手はず?……って、まさか」
俺は嫌な予感がしてソファーから立ち上がろうとした。が、マカは即座に移動して俺の腹の上に座り込んで、無理矢理押さえ込む。おわわわわ、などと悲鳴を上げている内に、上から更に重さが加わる。マカはもにゃっと変な声を上げて潰れた。潰している奴の心当たりなんてひとりしかいない。
「やっほーう!マカが珍しく頼み事なんてするから、ブレア嬉しくて飛んで帰ってきたよ!」
「ぶ、ぶぶぶ、ブレ」
「ブレアありがと、大好き。この前のお願い聞いてくれるの?今から大丈夫?」
「勿論よう〜。ソウル君がヘーキなら、ブレアはいつでもやる気満々だし?」
ブレアはにゃん、と見た目だけは可愛らしく首を傾げた。悪夢だ。















「ブレアはソウル君よりマカの方が心配だなあ。ほんとにそこにいるの?ヘーキ?これから仲悪くなったりしない?」
ブレアは見当外れな質問ばかりしている。場所はまたしても俺の部屋だが、ベッドの上にいるのは俺とブレアで、マカは椅子の上で足を抱えていた。パンツが見える、と指摘しても、出ていく気配も、座り直す様子も一切ない。
ブレアはいつも通りの露出っぷりである。下着みたいな服で、今日は上着とブーツを脱いでいるから更に扇情的に映る。頭の上から出ている耳がひょこひょこ動いて俺の気をそらす。
「平気。興味だもん」
「ほんと?パパママのエッチ見ちゃった、みたいな気分にならない?」
「お前例えが悪いって……」
「ソウルがパパって面?弟がエロ本読んで盛ってるの見た、くらいの気持ちだよ」
「マカ……」
俺は何だか泣きたいような気持ちである。実験体にされるネズミの気分が分かったような気がした。ブレアはうーん、と唸った。
「ソウル君を泣きわめかせるんでしょう?どうしたらいいかな〜。マカは何かリクエストある?」
「魔法は駄目。部屋が壊れちゃう」
「むにゅ〜。じゃあ地道にやるしかないのね。よし、ブレア頑張るね!」
「うん、頼りにしてるね」
「俺、俺の意見は?」
二人は完全に無視してガッツポーズなど決めている。俺はがっくりと肩を落とした。この仕打ちは何だろう。何か酷いことしたっけ?昨日の課外授業だってうまくやったと思うのに。
「じゃーソウル君、こっちおいで〜」
ブレアはにこにこと、何が嬉しいのか分からない笑みを浮かべて手を広げた。俺がいつもマカにやっている行為である。顔をしかめて固まっていると、ブレアは向こうから抱き付いてきた。顔が柔らかい胸に埋まる。ギョッとして体が硬直する。動けない。全く動けない。頭が固まっている。マカの視線がフォークのように背中に突き刺さっている。
「〜〜〜、〜〜〜?〜〜、〜〜〜!」
「………………」
「〜〜〜〜くん、ソウル君!無視しないでよう、酷いなあ」
俺は見開いていた目を連続で開閉して、真上にあるブレアの顔を眺めた。ブレアは相変わらず嬉しそうなのだが、いつものいたずらっぽい地が見えている。口を近付けて、耳を噛み切りそうな距離で囁いた。息が直接鼓膜に触れて、俺は低くうめいてしまう。
「……マカもいれよう!」
「は、はあ?」
「やっぱりマカだけ仲間外れなんてよくないわあ。ね?ソウル君が相手できないならブレアがしてあげる!マカ!マカもこっちおいで!」
ブレアは最後だけ声を大にした。ぼうっとつまらなさそうに俺達を見ていたマカは、目だけを動かして反応する。
「私?え、何で私」
「マカも一緒にやろう〜。二人でソウル君をぎゃふんと言わせようよ、ね?」
「えええ〜?やる気しないよ」
ブツブツ呟くマカをブレアは強引に引っ張り、ベッドに招いてしまう。俺は必然的に後ろに下がることになるが、そこでとんでもないものを見た。あろうことか、ブレアがマカに口付けたのである。しかも親愛とか挨拶とかの領域を遥かに越えた、端的に言うとエロいキスをかましてくれた。俺とマカは目が点である。
「うひぁっ、うあう、ぶ、ブレア、なに?」
「だから〜、マカとブレアが仲良しこよし〜ならソウル君がぷんぷんして、いつもと違って面白いでしょ?」
「そ、それは、違うような」
みなまで言わせず、ブレアはまた深く口付ける。俺はマカの様子の方が、よっぽどいつもと違っているような気がした。既に顔が赤いし、呼吸は荒いし、自分のペースというものがない。
この前のことを思い出して、俺はブルブルと身を震わせた。マカは本当に、気を抜いて俺と抱き合っているらしいということ。それと今の状況は正反対だということ。
ブレアはわざわざ音をたててマカの口内をねぶる。マカは呼吸が苦しいのか、時たま唇が離れる度に口を開けたまま息をしていた。何だか、見てはいけないものを観察している気になる。
「マカはかーわいーなー。ソウル君はちゃんとしたキスなんかしないんでしょ?ブレアと一杯しよーねえ」
「やん、やだぶれあ、何で、もう」
マカは口では文句を言うが、力が抜けているらしく、本人はブレアを押し退けているつもりなのだろうけど、手はブレアの肘にかかった状態で止まっていた。ブレアはキスを続けながら、マカのカーディガンに手をかけて、ボタンを全部外してしまう。更にシャツに手を伸ばし、器用にボタンを外す。
「ソウル君は全部脱がない方が好きかな?これでやめとこっか〜」
ブレアは上目使いで俺を見た。俺は声もなく頷くしかない。ブレアはマカの腰を抱くと、ひょいと回転させて自分の体の前に置いた。俺とマカが普段しているポーズ。ただ、マカの表情は普段の十倍とろけているけれども。
マカは自分が半分脱がされていることも分かっていないみたいだった。ブレアに寄りかかってぼんやりしている。俺とも目が合わない。ブレアはマカの脇から腕を通し、シャツをはだけさせてブラを露出させる。今日はきちんと着けていたらしい。
「マカのおっぱいだよ〜。ソウル君はきちんと見たことある?心臓が凄くどきどきしてるんだねえ」
「ちょ、ブレア、やめてよ、恥ずかしいよ」
「大丈夫大丈夫。ソウル君目ぇ真ん丸だから」
ブレアは楽しそうに笑うと、手を前で一回組んだ。一体どんな魔法なのか、指をほどいた瞬間、ブラはぽとりと外れて、マカの小さい胸が露出する。
マカは慌てて隠そうとしたが、ブレアは手首を掴んでベッドに押し付けた。座ったポーズを維持。結果、マカが暴れれば暴れるほどカーディガンは脱げるわシャツはずれるわスカートはシワになるわで、更に恥ずかしい姿をさらすことになる。
「やだっ、ブレア離してよっ、いくらソウルでも恥ずかしいよ」
「恥ずかしくないってば。マカの裸は可愛いんだから。ちょっとおっぱいは小さいけどね?」
「そ、それを言わないでよぉ……」
「普段と違うことするんでしょ?これだって立派な勉強じゃん。今日はあ、マカのエッチぃ姿をソウル君にしっかり見てもらって、ついでにソウル君を泣きわめかせる、という寸法ね」
「目的とずれているような気がするんだけど……」
「ずれてないよう。ほらほら、ソウル君、見て見て。マカだってきちんと興奮するんだよ?」
知ってるよ、と俺はかすれた声で答える。小さい胸だが、乳首がピンと上を向いている。ブレアは細くて長い指先で、胸の先端をいじる。マカはあひゃあ、とここはいつも通りの声を上げた。
「やだよう、やだ、恥ずかしいから、うええ、やめてよう」
「駄目よマカ。それをソウル君に言わせるんでしょ?マカが言っちゃ駄目なんだから」
「あう、あふっ、やだよう、何か変な、感じが、するからっ」
「うふふ〜。マカは見られるのがいいのね?それともソウル君だからいいのかなあ」
マカはいやいやと首を振る。ブレアはマカの体をいじることをやめない。俺はその様子を間近に見せられているわけだが、正直な話、自分がどんな顔をしているのか考えたくもない。知っている奴の裸なんて面白くも何ともないはずなのに(マカは特にそうである)、まるで初めて見る人間である。何だか、酷く、興奮する。マカに興奮しているのか、ブレアに興奮しているのか。どっちも正解で全部間違っている。場を外したい。出ていきたい。色々と抑えられないものがある。
ブレアの手はいったんマカの胸から離れ、はいたままのスカートの中に滑り込んだ。マカははっと気付いて足を閉じるが、それで余計にブレアの手を抱え込んでしまう。何もしていないのに体を震わせた。
「やだっ、ブレア駄目だってば」
「マカいけない子〜。ぐちゃぐちゃだよぅ?これはブレアがおっぱいいじったから?やっぱりソウル君が見てるからなのかな〜?」
「あふぁっ、ひゃんっ、ちがっ、あんっ」
ブレアはわざとなのか、マカの膝を掴んで無理矢理足を広げさせた。色気のない下着の中でブレアの指が動いている。マカは足を閉じようとするけど、ブレアに邪魔されて全く動けない。ブレアはにやにやと嬉しそうに笑いながら、空いている手をマカの頬に当て、口の中に指を突っ込んだ。
「マカぁ、寂しいでしょ、ブレアの指でも舐めてよ」
「あふぁ、ひぁ、ぶれあのばか」
「でもまだイッちゃ駄目よ?ソウル君をぎゃふんと言わせなきゃねえ〜。あ、ソウル君、何か感想ある?こんなマカは初めてかな〜?」
「…………俺ん時でもそのくらいの声が欲しい」
「だってえ、マカ。聞いた?ソウル君はエッチぃマカの方が好きなんだって!よかったねえ!」
「そうりゅ、あとで、おぼえて、あふっ」
マカは恨めしそうに俺を睨んだが、すぐにブレアに気をそがれてしまう。ブレアはぐちゃぐちゃと膣口をいじっていたが、不意に指を抜いた。てらてらと光る粘ったものを、マカにさせているように舐めとる。
「ソウル君ブレアとキスしよっか。マカの味が知りたいでしょ?」
「やっ、やめてよ!皆変態ばっかりだよ!」
「マカにもあとでお裾分けしてあげるから。ね?」
「そんな気遣いいらないよう!」
俺はブレアに手招かれるまま、ずりずりとベッドの上を這った。ブレアの指が俺の頬に触れる。少し冷たいのは濡れているからだろうか。ほとんど躊躇いもなくブレアと唇を合わせる。すぐに舌が入ってきた。いやに長くてざらついていた。さすが猫、である。マカの味というか、ブレアの唾液が一杯流れてくる。何が何やらさっぱり分からないが、キスは気持ちがいいことのひとつだと思う。
ブレアは口を離すと、目を丸くして首を傾げた。
「ソウル君キスだけで目がとろけてる〜。マカより酷いよう」
「そりゃ、あんなん見せられたら誰だって興奮するだろ」
「ふうん?そうなんだってマカ、ソウル君はまだまだ物足りないって」
「だ、誰もそんなこと言ってねえじゃん」
ブレアはマカから離れると、体をぺたんと曲げて俺の足元に顔を近付けた。何かと思えば、ベルトを外している。あっという間に、既に勃ち上がった俺のが取り出された。ブレアの指は冷たくて、俺は思わずうめく。
「ソウル君マカにはやらせないって聞いたからね、ブレアがやってあげるよ」
「なっ、そんなんっ、どっから」
「ほらあ、マカしっかりして?ソウル君が泣きわめくよ〜」
ブレアの声で、俺ははっと顔を上げた。まじまじとこちらを凝視するマカと、ばっちり目が合う。マカは顔が赤かったが、目をそむけることはない。俺が軽いパニックに陥りそうになる前に、ブレアはぱくりと奥までくわえこんだ。
「あっ……ソウル、顔が凄い……」
「うひゅひゅひゅ〜、マカはひっきょうちゅーけーい」
「中継、すんなっ」
マカは解放されたのをいいことに、手を付いてブレアに近寄った。ブレアが軽いストロークを繰り返している様子をガン見し、交互に俺の表情を観察している。
「私、ソウルが顔赤くしてるの初めて見たかも。何か新鮮」
「しんっ、新鮮ってお前っ、うくっ」
「あああああー、やだ、ソウルがあえいでるのも初めて見た。ブレア頑張って!私もっと見たい」
マカは目をらんらんと輝かせた。俺は顔を覆う。普段、マカが嫌がる理由が理解できる。これは恥ずかしい。大変恥ずかしい。もう勘弁してくれというくらい恥ずかしい。ブレアは俺への嫌がらせのつもりなのか、わざわざ音を立てて吸い上げている。それがまた卑猥な音なのだ。
マカは俺の手を握り、無理矢理顔からはがす。
「駄目だよソウル。泣いてわめいて許しを請わなきゃ」
「……無理……無理です……」
「わめいてないなあ」
マカはブレアのそれがうつったのか、にやにやと嫌みったらしく笑った。手を押さえたまま顔を近付けると、首を傾けてキスをしてくる。ついばむような感じだが、次第に深くなっていく。
ブレアは不意に顔を上げた。
「ソウル君マカとキスしてる時、滅茶苦茶苦しそうな顔してるのね。これもいつも通り?」
「あふっ、ちが、今回は」
「今回は?」
「ブレアがいるからいつもと違うんだよね?」
マカが代わりに答えた。ぺろりと舌を出して、俺の唇を舐める。ここは頷いていいところなのか、黙っていた方がいいのか。今後もパートナーを続けていく上で選ぶべき選択はどちらだろう。とりあえず黙っておくことにする。マカが手を握る。舌が触れそうになる近さで囁く。
「ねえ、ソウル、どっちがいい?」
「どっち、って」
「私とブレア、どっちにいれたい?」
酷く直接的で、品がなくて、蠱惑的な、マカらしくない言い回しだった。ブレアはぶうぶうと文句を言う。
「えええ〜!マカそれはないよぉ、ブレアだって楽しみにしてたのに!」
「だから、ちゃんと選択式にしてあげたじゃん」
「ソウル君がマカ以外を選ぶはずないじゃん!いいよーだ、ブレアこっちでいちゃつくから!」
ブレアはその宣言通り、さっさと移動してマカと入れ替わった。マカはスカートをめくって、俺の上に乗る。さして躊躇うこともなく、自分の中に招き入れた。俺は妙にかん高い声を出してしまう。
「やだ……凄いぬるぬるしてる……」
「だってブレアが頑張ったもーん。ソウル君そろそろ泣いてくれるかなあ?みぃんな君の涙が見たいんだよぅ?」
「私の時はこんなんじゃない癖に、やっぱりソウルって変態じゃん」
マカはゆっくりと腰を動かした。俺はもう敏感で、これ以上動かれたらたまったもんじゃない。手を伸ばしてマカの服を捕える。
「だーめよっ」
と思ったら、その手を横からブレアに払われた。払ったついでに指を絡められて、上半身を横に向けられてしまう。上からブレアのキスが降ってくる。いや、降ってくるというより、落雷みたいに激しく落ちてくる。息、息ができないのだ。すぐに顔が赤くなるのが分かる。呼吸が苦しい。快楽は打ち付ける波のようだ。
「あふんっ、ひゃんっ、あんっ、あうう、あふっ」
マカの声だけが聞こえる。何だか意識が遠くなる。必死で振り戻す。ブラックルームの鬼を思い出す。狂気に食われそうになった時、俺は何をしていたっけ。
急に醒めた感情がよぎる。ブレアから顔を振り払って、マカに叫ぶ。
「ま、マカ、待った、俺何も付けてない」
「ふあっ、えっと、うくっ、ううんっ、いいよ、別に」
「へえっ?よくねえだろ!ちょ、ちょっと待てよ」
「ソウル君駄目な子ぉ〜。女の子がいいって言ってるんだから、そのまんま出しちゃえばいいのに」
「そ、そういうわけにもいかねえだろうがっ!」
叫んだっ、と二人はいやに嬉しそうだが、こちとら大変な問題である。万が一が起こったらどうするのだ。どうすればいいのだ。マカは大切なパートナーなのに、明日だって授業があるのに、これからも一緒にいたいのに!
「へーきっ、ね?そのまんまでいいよ、ソウルだって苦しいでしょ?ふふ、涙出てるし」
マカは急に柔らかい声を出した。手を伸ばして、俺の目元に触れる。それで気付いた。確かに、目が潤んでいるみたいだった。
「そんなに感動した?」
「ちがっ、恐怖だよ、すっげえ怖いんだよ」
「ソウル可愛いね」
「ブレアには二人が可愛いよう!」
会話の置き去りにされたことが悲しいのか、ブレアは頬を膨らませてマカに抱き付いた。長い舌を出して、マカの唇から首元にかけてをなぞっていく。マカはくぐもった声を出した。
「やだっ、ブレアまたそういうことする!」
「可愛い二人を気遣って何が悪いのかな〜」
「うあうっ、やめっ、やめてってば!」
勿論ブレアがマカの制止を聞くはずもなく、体はどんどん沈んでいって、最終的に腰にしがみ付くような姿になってしまう。ブレアの体は相当に柔らかい。マカは腰でも砕けたのか、ぶるぶる震えるだけで動かないし。俺は自分の目を拭って(目元が熱くなっていたし、感情が高ぶった結果としての涙なのだろう)、ゆっくりと体を動かし始めた。マカは急に来た衝動にギョッとしたようで、高い声を上げた。
「やっ、ちょっと待ってソウルっ、何か、つよっ、強いよ!」
「無理。色々無理」
「ひどっ!やんっ、またわたし、じゃん!ううう、ひゃんっ、酷いよう……」
「酷くない、さっぱり酷くない」
「さっき、泣いた、くせにっ!」
「泣いてませんよ」
マカが難癖をつけるのは珍しい光景なので、俺は嬉しくなって動くのをやめられない。ブレアは今は何をしているのやら、マカのスカートを持ち上げて結合部に顔を埋めている。本当、周りは変わった奴ばかりだ。
「あんっ、も、やだっ、うええ、ええ、ううっ」
「マカ、今日は、静かな」
「だって、うえええん、人が一杯、なんだもん、ソウルの馬鹿、うえええ」
そして結局泣き出すわけだが、いつも通りという感じがして俺は心地よかった。小さい胸も、白い肌も、細い腰も、全部いつも通りのマカである。変なことを考えても変わらないし、多分これからも変わらない。凄く嬉しいことだ、好ましいことだ、幸福なことだ、素敵なことだろう。
「そうっ、ソウル、うええ、わたし、もうだめ、やだっ、うええん、ソウル、早くしてよ!」
答えられないけど、リクエストには応えられそうだった。だから、マカの命令には従ってしまうのだ。俺って甘すぎる。















つうわけで。
俺とマカはぐったりとベッドに倒れていた。この状況を作ったひとりであるブレアは、さっさと猫に戻って出ていってしまった。物足りないようだったが、その辺りはどう折り合いをつけるつもりなのだろう。深く考えないようにしよう。
「あ゛ー、えっと、前が十日だったっけ」
「何数えてんの?」
マカは泣いた影響で、腫れた目、枯れた声でぐったりしている。服は直さないし、スカートはシワだらけで半分脱げているし、しかもそこから色んな液が出てきているしで、誰か来たら誤解されそうな格好だ。本人は全く意に介さず、呑気に指を折っている。
「安全日」
「ぐはっ……」
「本当に大丈夫だったかなあって思って。いまいち不安」
「ま、まままままま、ままま」
「なに、気持ち悪い声出さないでよ。ソウルが心配すること?」
「しないと思ってんの?」
「あとの祭りって言葉知ってる?」
俺は暑くもないのに体中から脂汗が流れるような気がした。まじか?本当か?まずかったらどうしよう。
「お、俺は、とりあえず資金を」
「ばーか。本気にすんなよ。ブレアが大丈夫だってさ。魔法で奥までいかないようにしてくれたんだって。最後に何かやってたでしょ?あれ」
べちっ、とマカは俺の額に思いっ切りデコピンを食らわせた。思わず目をつぶると、痛みのあとに柔らかいものが押し付けられた。マカが唇を付けている。あとついでににやにや笑っている。
「私としてはよかったよ。珍しいもの見れたし、文句なし?」
「俺の立場とかそういうのはあ?」
「なし?みたいな」
「マカなんかいつも泣いてんじゃん!」
「泣いてませーん」
苦しい言い訳である。が、マカは言い訳とさえ思っていないらしく、取り繕うような表情はしない。終始楽しそうな笑顔だった。いいのか、これで許すのか俺。
情けねえー。





2008:12:11